「S/4HANA移行案件は需要がある」とよく聞くけれど、実際の現場ではどんな仕事をするのか。この記事では、S/4HANA移行プロジェクトとECC保守の両方を経験したFIコンサルの筆者が、移行案件の実態をお伝えさせていただきます。
筆者はSAPコンサルタントとして3年働き、FIモジュール(会計)を担当しました。その中で、S/4HANAへの移行プロジェクトでは既存機能の移植チームのリーダーを務めています。
ネットで見つかる情報はベンダーの移行サービス紹介や技術解説が中心です。この記事は「移行案件の中で働く人には、何が待っているのか」というキャリア視点で書きます。
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。プロジェクトの体制・進め方は案件によって差がありますので、あくまで筆者個人の体験としてお読みください。
結論:移行案件は「引っ越し」では終わらない。だからスキルがつく
詳細は後ほど説明しますが、両方を経験した筆者の実感は以下となります。
- 筆者が入った移行案件は50人規模・約1年。既存機能を移す「移植」だけでも大仕事
- 保守は学びの「幅」、移行は学びの「深さ」。スキルアップの実感は移行案件の方が大きかった
- 案件は確かに多い。それ以上に、人が足りていなかった
筆者の前提
| SAPコンサル期間 | 約3年(FIモジュール担当) |
| 経験した案件 | S/4HANAへの移行プロジェクトと、稼働後のECC保守の両方 |
| 移行案件での役割 | FI領域の既存機能の移植チームリーダー |
| 入口 | 金融系SAP導入での固定資産まわりのアドオン開発 |
未経験からSAPコンサルになった経緯は「未経験からSAPコンサルになるには?」に、働き方の実態は「SAPコンサルはやめとけ?」に書いています。
S/4HANA移行案件とは(2027年問題)
多くの企業が使ってきたSAPの旧バージョン(ECC)は、標準保守が2027年末に終了する予定です(延長オプションを使っても2030年末まで。いわゆるSAP 2027年問題)。このため、ECCから後継のS/4HANAへシステムを載せ替える「移行案件」が各社で走っています。
「載せ替え」と聞くとそのまま引っ越すだけに思えますが、実際には既存の機能・アドオンをS/4HANAで動く形に作り直し、テストし、業務を止めずに切り替えるという大掛かりなプロジェクトになります。
移行案件の中で実際にやったこと
筆者が入った移行プロジェクトは、全体で50人規模・期間は約1年。その中で筆者は、FI領域の既存機能を移植するチームのリーダーを担当しました。ECCで動いている会計まわりの機能を、S/4HANA上で同じように動くようにしていく仕事です。
大変だったのは、移植が「そのまま移すだけ」で終わらなかったことです。既存のアドオン機能に追加要件が入り、短い期間での対応と、どこまでやるかのスコープ整理に苦労しました。移行のタイミングは業務改善の要望が噴き出すタイミングでもあり、「ついでにここも直したい」が重なっていきます。
リーダーとしては、メンバーの進捗管理と、顧客との「やる・やらない」の線引きが仕事の大きな部分でした。SAPコンサルの経験が転職で「マネジメント」として評価されたのは、まさにこの経験です(詳しくは「SAPコンサルからエンジニアに戻れる?」に書いています)。
移行案件とECC保守、仕事はどう違うか
両方を経験した実感を整理すると、次のようになります。
| ECC保守 | S/4HANA移行 | |
|---|---|---|
| 学び | 幅が広い(様々な業務・機能に触れる) | 深さが出る(担当業務の理解度が上がる) |
| 時間の使い方 | 対応工数が厳密に決まっていて、効率勝負 | 期間が長く調整は利くが、タスク・課題が多い |
| 大変さ | 限られた工数で終わらせるプレッシャー | 稼働率が高くなりすぎる傾向 |
保守は幅広い業務・機能に携われるので学びは多い一方、対応の工数が厳密に決まっており、効率よく進める力が求められます。移行プロジェクトは期間に幅があるぶん調整は利きますが、タスクと課題の量が多く、稼働率が高くなりすぎる傾向がありました。
そのうえで、スキルアップの実感が大きかったのは移行案件です。1つの業務領域を深く掘って作り直す経験は、担当業務への理解度を一段上げてくれました。
幅を広げたいなら保守、深く掘りたいなら移行!
どちらも経験できると強いです!
「案件が豊富」は現場の実感と合っているか
合っています。ただし現場にいた実感としては、「案件が多い」よりも「人が足りない」の方が近いです。
案件は多くあるのに対応できる人が足りず、案件を辞退したり、人数が足りないままこなしたりする場面が多いと感じていました。先ほど書いた「稼働率が高くなりすぎる」のも、この人手不足と地続きです。
これから入る人にとっては、需要面の追い風がしばらく続くということでもあります。一方で、忙しさとセットであることは覚悟しておいた方がよいです。
これから移行案件に入る人へ
移行案件は大変ですが、一度きりの大きな切り替えを中で経験できるのは、キャリアとして貴重です。業務理解の深さも、進捗・スコープを管理した経験も、SAPの外に出ても評価されます。
未経験からこの領域に入りたい方は、筆者が実際に入ったルートを参考にしてみてください。
▼未経験からSAPコンサルになった実体験はこちら▼


転職でSAP領域に入るなら、IT・Web業界に特化したエージェントで求人を確かめるのが近道です。筆者が実際に使ったGeeklyの体験談も参考になると思います。
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さいごに
この記事では、S/4HANA移行案件の実態を、移行と保守の両方を経験した筆者の実体験でお伝えしました。
移行案件は「引っ越し」では終わらない。だからこそ深いスキルがつく。そして案件より人が足りない。これが中にいた筆者の実感です。
需要のある領域でスキルを深めたい方にとって、移行案件は挑戦する価値のある現場だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。



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