AIがコードも答えも出してくれる時代に、IT資格を取る意味はあるのか。資格の勉強を続けながらAI開発の仕事に移った筆者の経験から、この疑問への答えをお伝えさせていただきます。
筆者はSIerでエンジニアを約7年、SAPコンサルタントを約3年経験し、2026年8月から生成AI・LLMを使ったアプリケーション開発に携わるAI開発エンジニアとして働いています。これまでにAWS認定を7つ、SAP認定資格(FI領域)、Java Gold、応用情報技術者を取得し、資格を持った状態で2回転職しました。本業とは別に、Claude Codeでスマホアプリを個人開発してApp Storeに公開しています。筆者の詳しい経歴は「ITライセンス」著者のプロフィールにまとめています。
この記事では、転職で資格がどう見られたか、失効した資格から分かったこと、AIの誤りに気付くのに必要だった知識、そしてAI資格は取るべきかまでを、筆者の経験と試験の公式情報からまとめます。
結論:資格の「中身」は意味がある。「肩書き」だけの価値は下がった
詳細は後ほど説明しますが、筆者の経験から出した答えのまとめは以下となります。
| 項目 | 筆者の経験・公式情報から言えること |
|---|---|
| 転職での資格の見られ方 | 書類選考では効いた手応えがあった。面接で評価されたのは、資格の勉強を通じて話せるようになった「何を設計・構築したか」の中身 |
| 資格の肩書き | AWS認定は有効期間3年。筆者のAWS認定7つはすべて失効している。それでも勉強で身についた設計の考え方は残っている |
| AI開発で要った知識 | AIの報告の誤りに気付くには、データベース・サーバー・ビルドの仕組みといった基礎知識が必要だった |
| 試験そのものの変化 | ITパスポート試験は2023年8月のシラバス改訂で生成AIの項目を追加(2024年4月の試験から適用)。それ以外の試験区分も2023年12月の改訂で「AI(生成AIを含む)利活用」を評価対象に加えた |
| 結論 | 意味はある。ただし「持っていること」ではなく「学んだ中身を使って説明・判断できること」に価値が移った |
- 資格は「スタートライン」。実務や作ったものの話とセットで評価される
- 肩書きは期限や試験の終了で消えるが、勉強の中身は残る
- AIの答えを確かめるための基礎知識を、体系的に学ぶ手段として資格は使える
「AI時代に資格は意味ない」と言われる3つの理由
まず、「意味ない」と言われる理由を整理しておきます。どれも一理ありますが、よく見ると「資格の名前を持っていること」への指摘で、「資格の勉強で身につく中身」への指摘ではないと筆者は思います。
理由①:知識はAIに聞けば出てくる
用語の意味やサービスの使い方は、AIに聞けばすぐに答えが返ってきます。暗記した知識を証明するだけの資格なら、価値は下がって見えます。
ただし、AIの答えが正しいかどうかを判断するには、聞く側にも基礎知識が要ります。この点は後ほど、筆者の個人開発で実際に起きたことで説明します。
理由②:採用では資格より「何を作ったか」が見られる
AIで誰でもそれなりの成果物を作れるようになると、資格よりも実際に作ったものや関わったプロジェクトの話が重視されやすくなります。これは筆者の転職でも実感したことです。
理由③:技術の変化が速く、学んだ内容がすぐ古くなる
生成AIまわりのツールやサービスは入れ替わりが速く、試験の範囲が追いつかない部分もあります。資格の中には有効期限があるものや、試験自体が終了するものもあります。
筆者の2回の転職で、資格はどう見られたか
筆者は2023年8月にSIerからSAPコンサルタントへ、2026年8月にSAPコンサルタントからAI開発エンジニアへ転職しました。どちらも在職中に活動し、資格を持った状態で選考を受けています。場面ごとの資格の効き方をまとめると、以下のとおりです。
| 場面 | 資格の効き方 |
|---|---|
| 社内(1社目のSIer) | AWS認定を取ったあと、AWSで何ができるかを調べる仕事が回ってきた |
| 書類選考 | AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナルが通過に効いた手応えがあった |
| 面接 | 評価されたのは資格の名前ではなく、AWSで何を設計・構築したかという中身 |
| 実務経験が伴わない段階 | 「資格は評価するが、実務でどう使うかが分からない」と言われた企業もあった |
書類では効いたが、面接で見られたのは中身だった
AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナルは、書類選考の通過に効いたという手応えがありました。一方で、面接で評価されたのは資格の名前ではなく、資格の勉強を通じて話せるようになった「AWSで何を設計・構築したか」という中身でした。
実務経験が伴わない段階では、「資格は評価するが、実務でどう使うかが分からない」と言われた企業もありました。面接の反応がはっきり良くなったのは、実際にAWS上で組んだ仕組みを自分の言葉で説明できたときです。
社内では、資格が仕事を取りにいく目印になった
転職の前にも資格が効いた場面があります。1社目のSIerでソリューションアーキテクト – アソシエイトを取ったあと、社内で「AWSで何ができるか」を調べる仕事が筆者に回ってくるようになりました。資格は、新しい分野の仕事を任せてもらうきっかけとして機能していました。
この「資格がきっかけになり、その先は中身で評価される」という関係は、AIが普及しても変わらないと筆者は思います。AIで成果物を作れる人が増えるほど、その成果物について自分の言葉で説明できるかどうかの差が大きくなるからです。
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資格の肩書きは消える。筆者のAWS認定はすべて失効している
AWS認定には3年の有効期間があり、期限までに再認定しないと失効します。筆者が取得したAWS認定7つは、AWS中心の仕事から離れたこともあり再認定を受けておらず、いずれも現在は失効しています。つまり、肩書きとしては現在ひとつも残っていません。
さらに、筆者が取得したAWS認定データベース – 専門知識(DBS)は、2024年4月に新規受験が終了しています。資格によっては、試験そのものがなくなることもあります。
それでも、勉強の過程で身についた設計の考え方や、AWSで実際に仕組みを作った経験は残っています。転職の選考で評価されたのも、資格の名前より実際に作ったものの話の方でした。手放すのは肩書きであって、中身ではありません。
変化が速い時代ほど、資格を「持ち続けるもの」ではなく「ある時点で体系的に学んだ証拠」として扱うと、失効や試験の終了に振り回されにくくなると思います。
AIの誤りに気付くのに要ったのは、資格の範囲にある基礎知識だった
筆者はClaude Codeでテニスの練習記録アプリを個人開発し、App Storeに公開しました。コードを書く作業はほぼAIに任せましたが、AIの報告をそのまま受け取って起きた事故がいくつもありました。
| 起きたこと | 気付く・防ぐのに必要だった知識 |
|---|---|
| アプリのデータを新しい形式に変換する処理の書き方を誤り、そのデータベースが二度と開けなくなった | データベースの仕組み(データの持ち方・変換の手順) |
| 公開用サーバーの1日あたりのデプロイ回数の上限を使い切り、変更の反映が24時間止まった | 利用するサービスの制限と、どの変更で何が動くかの理解 |
| Mac上の再現環境(iOS Simulator)での確認を、AIが「実機で確認した」と報告した | シミュレーターと実機の違い |
| 特定のフォルダだけを変更したときにビルドが走らず、自動チェックの失敗を見逃した | ビルドや自動テストが、いつ・何をきっかけに動くか |
どれも、コードを一から書けるかどうかとは別の知識です。データベースやシステムの構成といった分野は応用情報技術者試験の範囲に含まれ、クラウドのサービスの組み合わせ方や制限を踏まえた設計はAWS認定で学べます。AIに任せる範囲が広がるほど、AIの答えを確かめるための基礎知識の比重は大きくなると筆者は考えています。
資格の勉強は、こうした基礎を「試験範囲」という形で抜け漏れなく押さえられるのが強みです。AIに聞けば断片的な答えは得られますが、何を聞けばよいかが分からない分野は、そもそも質問できません。
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資格試験そのものもAIを範囲に取り込んでいる
「資格は時代遅れ」という見方に対して、試験を実施する側も動いています。IPA(情報処理推進機構)は、2023年8月にITパスポート試験のシラバスへ生成AIに関する項目・用語例を追加しました。この改訂は2024年4月の試験から適用されています。さらに2023年12月には、ITパスポート試験を除く全試験区分で「AI(生成AIを含む)利活用」を評価対象に加える改訂を発表し、CBT方式(会場のパソコンで受験する方式)の試験では2024年10月から適用されています。
また2026年3月には、2027年度に「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」を新設し、その区分の1つとして「データ・AI」の試験を設けるなどの見直し案が公表されています。こちらは検討中の案で、今後変更される場合があるとされています。
- IPA:ITパスポート試験におけるシラバスの一部改訂について(生成AIに関する項目・用語例の追加など)
- IPA:出題範囲・シラバスの一部改訂について(近年の技術動向・環境変化などを踏まえた改訂)
- IPA:情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について
AI資格(G検定・生成AIパスポートなど)は取るべきか
AI時代の資格というと、AIそのものを扱う資格も気になるところです。代表的なものを、公式サイトの情報で整理しました。なお、筆者はこれらのAI資格は持っていません。
| 資格 | 実施団体 | レベル・位置づけ | 試験形式(公式サイトの記載) |
|---|---|---|---|
| G検定(ジェネラリスト検定) | 日本ディープラーニング協会(JDLA) | AI・ディープラーニングの活用リテラシーを身につけるための検定。受験資格の制限なし | オンライン試験(自宅受験)は100分・145問程度の多肢選択式。会場試験もあり |
| 生成AIパスポート | 生成AI活用普及協会(GUGA) | 生成AIの基礎知識・活用方法に加え、情報漏洩や権利侵害などの注意点までを扱うリテラシー資格 | オンライン(IBT方式)・60分・60問の四肢択一式(一部複数選択を含む) |
| AWS Certified AI Practitioner | AWS | Foundational(入門)レベル。AWSでのAI・機械学習の概念と生成AIの基礎知識を問う | 90分・65問 |
| AWS Certified Generative AI Developer – Professional | AWS | Professionalレベル。2年以上のクラウドの経験と、生成AIソリューションの実装で1年の実務経験がある人が対象者像 | 180分・75問(択一選択または複数選択) |
受験料や試験日程は変更されることがあるため、各公式サイトでご確認ください。
筆者の考えでは、AI資格は「AIの仕組みや注意点を体系的に知る入口」として使うのが向いています。G検定や生成AIパスポートは、AIを業務で使う立場の人がリテラシーを揃えるのに役立ちます。AIを使って何かを作る側に回りたい場合は、AWSのようにクラウドの構築と結び付いた認定の方が、実務の話につなげやすいと思います。
一方で、AI資格だけを取っても、前の章で見た「AIの答えを確かめる」ための基礎(データベース・ネットワーク・システム構成など)は別に必要です。AI資格とIT全般の基礎資格は、どちらか一方ではなく組み合わせて考えるのがおすすめです。
▼AWS Certified AI Practitionerの勉強方法はこちら▼

AI時代に意味がある資格の取り方・意味が薄くなる取り方
ここまでの内容を、目的別の資格の選び方と、意味が薄くなりやすい取り方にまとめます。資格の名前で良し悪しを決めるのではなく、「何のために取るか」で選ぶのが筆者の考えです。
| 目的 | 候補になる資格 | AI時代に意味を持たせるポイント |
|---|---|---|
| 未経験からITの基礎を体系的に押さえたい | ITパスポート/基本情報技術者 | AIの答えを確かめるための用語と仕組みを、範囲に沿って抜け漏れなく学ぶ |
| AIの仕組みや注意点を知りたい | G検定/生成AIパスポート/AWS Certified AI Practitioner | AIを使う側のリテラシーとして取る。基礎資格と組み合わせる |
| クラウドで作る側に回りたい | AWS認定(ソリューションアーキテクト – アソシエイトなど) | 勉強した内容で実際に小さな仕組みを作り、説明できる状態にする |
| 今の業務の専門性を証明したい | 業務領域の認定(SAP認定など) | 資格は書類のきっかけ。面接では担当した業務の中身で語る |
逆に気をつけてほしい取り方
気をつけてもらいたいのが、問題の答えを暗記するだけで合格を目指す取り方です。暗記した知識はAIに聞けば出てくるので、それだけでは面接で語れる中身になりません。筆者が「資格は評価するが、実務でどう使うかが分からない」と言われたのも、実務と結び付けて説明できなかった段階でした。
また、数を集めること自体を目的にするのもおすすめしません。筆者のAWS認定のように、肩書きは期限で消えます。1つ取るごとに、学んだ内容で何かを作ったり、業務で使ったりする機会をセットで考えてみてください。
勉強の途中でAIを使うのは問題ないと思います。分からない用語をAIに聞き、その答えを参考書や公式ドキュメントで確かめる練習は、そのままAI時代の実務の練習になります。
▼未経験・初心者向けのIT資格はこちら▼


▼AWS認定資格全12種の比較はこちら▼


さいごに
この記事では、AI時代にIT資格は意味がないのかを、筆者の2回の転職、失効したAWS認定、Claude Codeでの個人開発で起きたこと、IPAの試験の変化からお伝えしました。
要点を1つにまとめると、資格の肩書きだけの価値は下がりましたが、資格の勉強で身につく基礎は、AIの答えを確かめる力としてむしろ必要になっています。
これから資格を取る方は、合格をゴールにせず、学んだ内容で小さなものを作ったり、AIの答えを自分で確かめたりするところまでをセットにしてみてください。資格の勉強で手が止まる原因が「分からないところを聞ける相手がいないこと」なら、プログラミングスクールで基礎を固める選択もあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼SAPコンサルからAIエンジニアに転職した経緯はこちら▼


▼プログラミングスクールの比較はこちら▼


※本記事の情報は2026年9月時点のものです。資格・試験の内容や条件は変更される場合がありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。


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