SAPコンサルタントとして年収が約840万円になったところで、その仕事を辞めてAI開発エンジニアに転職しました。年収は約750万円に下がっています。その判断をどう考えたのかを、今回はお伝えさせていただきます。
筆者はSIerでエンジニアを約7年、SAPコンサルタントを約3年経験し、現在は生成AI・LLMを使ったアプリケーション開発に携わっています。転職は2回、いずれも在職中に活動しました。1回目は4社から内定をいただいています。
転職の体験談は「年収が上がった話」ばかりが目につきます。ですが実際には、年収が下がると分かっていて動く場面もあります。この記事では、そのときに何を考えて、何に迷って、結果どうだったのかを、実際の金額を出しながら書いていきます。
転職エージェントのサイトには載りにくい話だと思います。同じような迷い方をしている方の材料になれば嬉しいです。
年収840万円を手放した転職のまとめ
詳細は後ほど説明しますが、まず経歴と年収の推移、そして結論をまとめます。
| 時期 | 職種 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 1社目(約7年) | SIer/エンジニア | 〜約650万円 |
| 2社目(約3年) | SAPコンサルタント | 約840万円 |
| 3社目(現在) | AI開発エンジニア | 約750万円 |
- 2社目を続けていれば年収1,000万円も見えていたが、やりたい技術は生成AIの領域にあった
- 年収は約90万円下がった。専門性を手放す不安はあったが、移って1か月の時点では後悔していない
- 転職活動は当初の志望(社内SE)どおりには進まず、最終的にエージェント経由ではなく直接応募で決まった
年収を下げる判断そのものより、「何を基準に決めるか」を先に持っていたかどうかの方が、後から振り返ると効いていたと思います。そこを中心にお伝えします。
SAPコンサルタントになるまでと、その3年間
SIerで7年働いて、未経験のSAP領域に移った
1社目は1000名規模のSIerで、Java・Spring Frameworkを使ったサーバサイド開発を担当していました。要件定義からリリースまでひととおり経験し、リーダーも3年ほど務めています。AWSを使ったインフラ構築もこの時期です。
7年目に転職活動を行い、4社から内定をいただきました。そのなかで選んだのが、まったく未経験だったSAPコンサルタントです。SAPは企業の会計・販売・在庫といった基幹業務を動かすERPパッケージで、開発というより業務の設計と導入支援が仕事の中心になります。
このとき意識したのは、キャリアの軸を今の延長線上だけで考えないということでした。目の前の条件だけで選ばず、将来の選択肢が広がる方を選んだ形です。この考え方は、結果的に2回目の転職でも同じように働きました。
年収は約650万円から約840万円になった
1社目の終盤で約650万円だった年収は、SAPコンサルタントに移って約840万円になりました。未経験の領域でこの上がり方をしたのは、SAPという職種の給与水準が高いことが大きいです。
未経験にもかかわらず評価してもらえた材料のひとつが資格でした。特にAWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル(AWS SAP)は、面接官の反応が明らかに違いました。SAPの実務経験では勝負できない以上、資格を取り続けてきたこと自体が「キャッチアップする力」の証明として見られたのだと思います。
※ここで出てくる2つの「SAP」は別物です。職種の方はERPパッケージのSAP、資格の方はAWS認定のSolutions Architect – Professionalの略です。
▼AWS SAPが転職でどう評価されたかはこちら▼

続けていれば1,000万円も見えていた
SAPコンサルタントは給与水準が高く、そのまま続けていれば年収1,000万円も見えていました。これは希望的観測ではなく、社内で実際に見えていた範囲の話です。
具体的には、約840万円を記録したクラスから1段階昇級する見込みがありました。昇級すると基本給が月5万円上がります。ボーナスの比重が高い会社なので、年収ベースでは100万円ほど上がる計算でした。
そこからさらに上の等級もあるため、そのまま続けていれば1,000万円台も現実的な範囲にありました。
つまり、辞める理由が「年収に不満があったから」ではなかったということです。ここが、よくある転職体験談と一番違うところです。
それでも、年収を下げて生成AIの仕事を選んだ
やりたい技術が、SAPの外にあった
SAPコンサルタントの仕事は、業務を理解して仕組みに落とし込む面白さがあります。ただ、技術的にやりたいことは生成AIの領域にあると感じるようになりました。
今の仕事は、LLM(大規模言語モデル)を使ったアプリケーションの開発です。1社目でやっていたサーバサイド開発に近い形で、扱う技術が生成AIに変わったと考えてもらうと近いです。
「専門性を手放す」ことへの不安はあった
迷わなかったわけではありません。3年かけて積んだSAPの経験は、そのまま持っていれば市場で通用し続ける専門性でした。それを自分から手放すことへの不安は確かにありました。
年収が下がることそのものより、こちらの方が重かったと思います。年収は取り返せる可能性がありますが、専門性は離れた分だけ現場感覚が薄れていくからです。
不安があるのは普通です。私が確認したのは「不安が無いか」ではなく、「その不安を抱えたままでも進みたいか」の方でした。
決め手になったのは何だったか
きっかけは2026年に入ってからです。技術系のSNSで生成AI関連の話題を見かける機会が明らかに増え、気になって自分でも触ってみることにしました。
印象が変わったのは、実際にClaude Codeを使ってみたときです。コードを書く作業そのものがAIとの共同作業に変わっていく感覚があり、AI開発の進化の速さを肌で感じました。
一方で、SAPの現場でここまでのAI活用が進むには時間がかかるとも感じていました。基幹業務を扱う以上、新しい技術の導入には慎重にならざるを得ないからです。
そこで考えが変わりました。技術そのものより「その技術に触れられる環境にいられるかどうか」の方が重要だ、と。だから転職先は、最新技術の取り入れに積極的な会社という基準で選んでいます。
結果として、年収を下げてでもAI開発の仕事に移ることを選びました。専門性のあるスキルを手放す不安はありましたが、今のところ後悔はしていません。
2回目の転職活動は、思ったとおりには進まなかった
ここは正直に書きます。この転職活動は、最初に立てた計画のとおりには1つも進んでいません。
最初は社内SEを目指していた
活動を始めた時点で志望していたのは、実は社内SEでした。AI開発エンジニアではありません。
1社目のときに感じていた働き方の問題(平均40時間・多い月は80時間を超える残業、管理業務の増加)を繰り返したくない、という気持ちが残っていたのだと思います。
Geeklyから始めて、途中でdodaを足した
最初に登録したのは、IT・Web・ゲーム業界に特化したGeeklyです。ただ、社内SEの求人が少なかったため、途中でdodaにも登録しました。
補足すると、これはGeeklyの弱点というより志望職種とのミスマッチでした。社内SEの求人自体が市場全体で多くなく、dodaに移ってからも状況は大きく変わっていません。
それでも登録してよかったと思っているのは、今の自分がどのくらいの条件で見られるのか、相場感がつかめたからです。年収を下げる判断をするときに、「そもそも下げなくても行ける選択肢はあるのか」を知らないまま決めるのは危険です。
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決まったのは、自分で見つけたAI駆動開発の求人だった
結論からお伝えすると、2回目の転職はエージェント経由では決まりませんでした。
社内SEの求人を探している途中で、以前から気になっていたSIer企業がAI駆動開発の求人を出していることを知りました。AI駆動開発は、生成AIを開発工程そのものに組み込んで進める開発の進め方を指します。そこに直接応募して、入社を決めています。
誤解のないように書いておくと、1回目の転職はエージェント経由で決まっています。エージェントが役に立たないという話ではありません。ただ、紹介される求人を待つだけにしない方が良いのは確かです。
志望が変わったのは、迷走ではなかった
社内SE志望で始めて、AI開発エンジニアで終わっています。書いてみると一貫性がないように見えますが、活動を進めるうちに自分が本当にやりたいことがはっきりした結果でした。
求人票を読み、面談で話し、自分の職務経歴書を何度も書き直すという作業は、それ自体が自己分析です。最初の志望が最後まで変わらない方がむしろ珍しいのではないかと思います。
逆に気をつけてほしいのは、最初に決めた志望に固執して、途中で見つけた選択肢を検討せずに捨ててしまうことです。私は4年目のときにも転職活動をして内定を得られないまま終えていますが、そのときの失敗の原因は自己分析と企業分析に時間を使えていなかったことでした。志望を見直す時間が取れていなかったとも言えます。
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年収は約90万円下がった。今のところ後悔はしていない
先に断っておくと、移ってからまだ1か月です。長い目で見てどうだったかは、まだ書ける段階にありません。ここでは現時点で言えることだけを書きます。
下がった額と、代わりに得たもの
年収は約840万円から約750万円になりました。差は約90万円です。月に直せば手取りで数万円の変化になります。
代わりに得たのは、生成AI・LLMを使った開発を実務でやれる環境です。独学や個人開発でも触ることはできますが、業務として腰を据えて取り組めるかどうかは別です。
開発、コンサルティング、AIと立ち位置を変えてきて分かったのは、現場ごとに「何が評価されるのか」がまるで違うということです。年収の額面だけを見ていると、この違いは見えてきません。
生活面で実際に変えたこと
まず家族には事前に相談し、理解してもらいました。ここは一人で決めてよい話ではありません。
固定費の見直しのような、生活そのものを変える対応はしていません。生成AIの知識は本業だけでなく、副業を含めていろいろな場面で活かせるため、将来的には金銭面でも回収できる可能性があると考えているからです。
ただしこれは見込みであって、確定した話ではありません。回収できなかったとしても納得できるかを先に確認したうえで決めています。
後悔していない理由
今のところ後悔はしていません。理由は単純で、下げた理由が「やりたいことがそこにあるから」で一貫しているからです。
もし「今は下げるけど、あとで上がるはずだから」という理由だけで決めていたら、上がらなかったときに納得できなかったはずです。
年収を下げる転職を考えている人に、先に伝えておきたいこと
ここまで自分の話を書いてきましたが、年収を下げる転職を無条件におすすめするつもりはありません。実際に注意した方がよいと思う点を書いておきます。
「入社後に上げればいい」を前提にしない
一番危ないのは、下がった年収を入社後に取り返す前提で決めてしまうことです。昇給の約束は選考の場では気持ちよく聞こえますが、実際にそうなるかは入ってみないと分かりません。
エンジニアの年収ダウン転職については、エンジニアtypeでも「キャリアの致命傷になる」という立場の記事が出ています。エンジニアは成果と評価の結びつきが見えにくく、下がった水準がそのまま基準になってしまう、という指摘です。反対側の意見にも一度目を通しておきましょう。
私の場合は、年収が戻らなかったとしても納得できるかを基準にしました。戻る前提で考えないという意味では、上の指摘と同じ結論だと思います。
下げ幅の上限は、活動を始める前に決めておく
私は年収700万円を線にしていました。今の生活を維持するのに必要な額を計算したところ、それくらいあれば問題なく暮らせると判断できたからです。
実際に決まったのは約750万円なので、線は超えずに済んでいます。先に線を引いておいたおかげで、オファーを受けるかどうかを迷わずに判断できました。
オファーが出てから考え始めると、目の前の魅力的な仕事に引っ張られて判断が甘くなります。冷静なうちに線を引いておきましょう。
専門性も資格も、離れたら消えるわけではない
手放すことへの不安について、ひとつ実例を書いておきます。転職の武器になったAWS SAPは、2022年に取得したもので、現在は失効しています。有効期間は3年で、AWS中心の職種から離れたこともあり再認定していません。
資格そのものは無くなりましたが、勉強の過程で身についた設計の考え方や、AWSで実際に仕組みを作った経験は残っています。転職の選考で評価されたのも、資格の名前ではなく実際に作ったものの話の方でした。
SAPコンサルタントの経験についても同じだと思っています。業務を理解して仕組みに落とし込むという部分は職種が変わっても使えます。手放すのは肩書きであって、中身ではありません。
年収を下げる選択をしているのは、自分だけではない
ひとつだけ、参考になる調査を紹介します。株式会社キッカケクリエイションが2025年9月12日〜17日に、過去5年以内の転職で年収が下がったものの満足しているITエンジニア100名に対して実施した調査では、年収が下がっても転職した理由の1位は「成長企業で経験を積めるから」(41.0%)、2位は「やりがいのある仕事ができるから」(24.0%)でした(PR TIMESのリリース)。
ただしこの調査は「下がったが満足している人」だけを集めたものなので、年収を下げた人全体の傾向ではありません。そこは差し引いて読む必要があります。それでも、同じ選び方をしている人が一定数いるという事実は、迷っている時期には支えになると思います。
さいごに
SAPコンサルタントとして年収が約840万円になり、続ければ1,000万円も見えていたところで、生成AIをやりたくて約750万円のAI開発エンジニアに移った話をお伝えしました。
結局のところ、年収を下げてよいかどうかは「下げた理由に自分が納得できているか」で決まると思います。上がる前提で下げると苦しくなりますが、やりたいことのために下げたのなら、上がらなくても納得できます。
なお、この記事を書いている時点で、移ってからまだ1か月です。長い目で見てどうだったかを語れる段階ではありません。ここに書いたのは結果ではなく、判断そのものの記録です。
これから同じような判断をする方は、まず今の自分が市場でどう見られるかを知るところから始めてみてください。相場を知らないまま下げる判断をするのが、一番もったいないと思います。転職エージェントに登録して求人を眺めるだけでも、判断の材料はかなり増えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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※本記事の情報は2026年8月時点のものです。年収はいずれも目安です。転職エージェントのサービス内容は変更される場合がありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。



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